【書評】バビロンの大富豪 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか

【若いうちに読みたい・読ませたい】「繁栄と富と幸福」についての不変の原則を、ストーリー形式でわかりやすく紹介した一冊。100年近くの時を超えて世界中で読まれ続ける本書が説く、非常にシンプルな原則とは?

『バビロンの大富豪』の要約(ウージー的解釈)

財産を築き幸福度の高い人生を送るためには、一定の法則を理解して実践していく必要がある。
その法則は単純なものであり、誰にでも実践可能で、再現性もある。
その原則とは「働き、貯めて、運用する」ことだ。

この本をお勧めしたい人

  • 毎月の収入を使い果たしてしまい、貯金や資産が無い人
  • 自分の人生を、自分の力で幸せなものにしていきたいと考えている人
  • 中学生・高校生以上の若い人

『バビロンの大富豪』について

では改めて、本書についての紹介です。


著者であるジョージ・S・クレイソン氏は1874年、米国に生まれ、兵役の後に出版社を立ち上げた人物です。

著者は1926年から、本書の原型となる古代都市バビロンを舞台にした寓話を定期的に発表し、パンフレットの形で知人や関係者向けに配布していました。

本書の副題にもあるとおり、それらの寓話は「繁栄と富と幸福」を築くための方法についての示唆に富んだものでした。

それが次第に銀行や保険会社などの金融業界、そして一般企業の経営者・幹部の間で評判となり、やがて一冊の本という形で刊行されます。

本はベストセラーとなり、発表から100年近くが経過する今となってもなお欧米の多くの人に読まれ続けています。


本書が書かれた1920年代と現代、そして古代都市バビロンで人々が生活していた時代では、当然ながら社会情勢や経済の仕組みなど、様々なものが大きく変化しています。

そのため「本書の内容をそのまま実践する」といったことはできず、時代に合わせた自分なりの解釈や工夫が必要となります。

ですが本書で書かれているのは「原則」であり、その原則については100年前も今も大きく変わるところはありません

だからこそ本書は現代を生きる我々にとっても学びが多く、時代を超えて読まれ続ける本となっています。

「繁栄と富と幸福」の全てを手に入れる方法こそが労働である

「原則」だからこそ、自分なりに解釈する必要がある

本書の舞台は、数千年前に栄えていた都市「バビロン」です。

なので、今の時代に直接使えるような具体的なテクニックなどは一つも無く、根本的な考え方を学ぶための本だと言えます。

ではその「根本的な考え方」とは何か?をざっくりまとめると、以下の通り。

「豊かで幸せな人生を送るためには「働き、貯めて、運用する」ことが必要だ」


当たり前といえば、当たり前。

だからこそ、この考え方がすでに身についている人の中には「本書を読む価値は無い」と感じる人も居るようです。Amazonのレビューを見てみると、そのことが良く分かります。

ですが同時に、この考え方を理解し、実践している人は驚くほど少ない、というのも現実です。

あるアンケートによると、30~40代のうち貯蓄額が100万円に満たない人の割合は60%を超えるのだとか。

そういった人にとっては、本書はまさに「考え方」を根本から改め、人生を変えるきっかけとなる可能性があります。


ちなみに「原則」であるからこそ、活字が苦手な場合は漫画版の『バビロン大富豪の教え』を読むのもアリかと思います。

もし私に小中学生の子供が居れば、漫画版を買ってリビングなどの目につきやすい場所にさりげなく置いておきます。

「貯めよう」と思えるかどうかが人生の分岐点

本書の中で一番最初の教えらしきものが、「最低でも収入の10分の1以上を使わずに取っておく」というものです。

非常に単純ですが、この教えを実践できるかどうかが、その後の人生にとって大きな分かれ道になります。


収入の10分の1というと、月給20万円なら毎月2万円。

「2万円で人生の分かれ道とか、さすがにちょっと大げさじゃない?」と思う方も居るでしょうが、ちょっと想像してみてください。


まず、半年後に発売される6,000円のゲームが欲しい小学生Aくんが居たとします。

Aくんはお小遣いを毎月きっちり使い果たしてしまうので、残念ながら発売日になってもこのゲームには手が出ず、我慢するしかありませんでした。

この状態は、「お金が無い」という環境によって我慢を強制されている、と言えます。


では次に、どうしても欲しいゲームが半年後に発売されることを知ったBくんが居たとします。

Bくんはお小遣いから毎月1,000円ずつ貯めることを決め、駄菓子や漫画の購入を我慢することにしました

そして半年後、Bくんは念願の新作ゲームをゲットすることができました。


AくんもBくんも、「我慢した」のは同じです。

違うのは、それが強制された我慢なのか、それとも自発的な我慢なのか、という点です。

大げさな表現をすれば、Bくんは自らの意志で自分の未来をより良いものにするのだと決断し、Aくんは目の前の欲望に流され続けたのだ、と言えます。


これ、大人でも同じですよね。
金額と時間はそれぞれ大きくなりますが、本質的には変わりません。


つまり「収入の10分の1以上を使わずに取っておく」というのは、決して金額の話ではなく、「自分の人生をより良いものにしていくという決断ができるか否か」という非常に大きな分岐点なのです。

Aくんタイプの人にとっては、この部分に気付かせてくれるというだけでも本書を読む価値は充分にあります。

「働く」ことに喜びを感じられるのが、最も幸福な人生

全9話で構成される本書。
その最終話は、元奴隷の大商人が自らの過去を、恩人の孫である若者に語って聞かせるというものです。

若者は当初、「働くなんて奴隷のすること」といった考えの持ち主だったのですが、その昔話を聞いて考えを改めることになります。

つまり、働くことの大切さを説くことで、本書は締めくくられている、と言えます。


「貯蓄と投資の大切さについて書かれた本」として紹介されることが多い本書。
ですが、私が一番感銘を受けたのはこの最終話でした。


奴隷という身分から解放されるため、つまり自分自身の自由を買い戻すため、懸命に自分の仕事に打ち込む人々。

そして、そんな人々が自由人に戻ってからも、そして富豪となってからも、やはり働いている。

毎日を遊んで暮らすことができる状況にあってもなお、働くことを自らの意志で選択している。


セミリタイアやFIREなどのブームが広がる中、私自身もそうした経済的自由、働かなくてもいい自由に対して、強烈な憧れがあります

ただ、働くことそのものに喜びを見出すことができ、そういった仕事によって社会と繋がっていくことができれば、それこそが「幸福」なのではないか、とも思います。


本書の副題は『 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか』。
繁栄と富だけではなく、幸福な人生を送るためには、やはり働くことも重要なのだと感じました。

※とはいえ「働く」とは、必ずしもサラリーマンなどの雇われ仕事を意味するものではない、とも思います。

『バビロンの大富豪』は子供にも読んでほしい名著

ベストセラーであり、ロングセラーでもある本書。

普遍的な内容であるからこそ、誰にとっても学びと気付きを与えてくれる一冊と言えます。

子供が大きくなったらまた読み返して、さりげなくリビングに置いておこうと思います。

プロフィール

自由になりたくて高配当株を買い増ししている、30代既婚子持ちの共働きサラリーマンです。
投資や節約、子育て、副業、共働き、といった内容で記事を書いていますが、基本的には「誰かの役に立つかもしれない日記」です。
無理をせず、でも投げ出さず。小さな行動をコツコツと積み上げていきます。

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