配当金の税金は損益通算(損出し)で節税しよう

こんにちは、ウージーです。
年末が近くなってくると、今年のうちに終わらせたいことが色々と浮かんできて、公私ともになんとなく忙しい感じがします。

投資に関してもそれは同じで、特に日本では年単位の収支をもとに税金を計算するので、節税するつもりであれば12月末までに諸々の行動をしておく必要があります。

かく言う私も株式投資でいくらかの配当金を受け取っているため、節税のためには行動が必要。

どんな方法で節税するかはその年の状況によって違うのですが、今年に関しては配当金の収益と取引での損失を相殺させる損益通算(損出し)を行っていこうと思っています。

なので今回は、配当金にかかってくる税金を損益通算の仕組みを利用して節税する「損出し」の方法について書いていきます。

損益通算(損出し)で節税するための条件

まず前提として、損益通算(損出し)で節税ができるのは以下の二つの条件に当てはまる場合です。

  • 1.配当金の受け取りや株の売却益などの確定利益がある。
  • 2.含み損(購入単価よりも現在の評価額の方が低い状態)となっている銘柄を保有している。

この両方の状態に当てはまる場合、損益通算の仕組みを利用することで節税(正確には税金の先送り)が可能となります。

この方法で節税するためには確定申告が必要となり、含み損となっている銘柄の売買を行うなど多少の手間もかかりますが、条件さえ満たせば節税効果も高く便利な方法ですので、しっかり仕組みを理解しておきたいところです。

損益通算で節税になる仕組み

上記の条件を満たしていると節税できる理由についてですが、具体的な数字を使う方が分かりやすいと思うので、以下に例を挙げます。なお、説明を簡単にするため税率は20%、取引手数料は無いものとして計算します。

まず、あなたが株を保有している企業から配当金として年間に100万円が支払われるとします。
節税対策を何もしなければ、この100万円の利益うち20%の20万円は税金として支払う必要があるため、実際にあなたの手元に残るのは80万円となります。
そこで、あなたは40万円分の含み損となっている銘柄を売却(損出し)することで、40万円の損失を確定させたとします。
こうすることで、配当金の利益100万円と売買による損失の40万円を差し引き(損益通算)することができ、この年の利益は60万円ということになります。
損益通算後の利益は60万円となったので、この年の税金は60万円の20%、つまり12万円です。節税対策を何もしなかった場合と比べて、税金は8万円も安くなりました。

上記はあくまでも一例ですが、金額が変わっても基本的な考え方は同じです。
つまり「損出し」をできるだけ端的に表現すると、「確定している利益を、未確定な損失(含み損)を確定させる(売却する)ことで差し引きする作業」となります。

節税はしたいけど、株はまだ保有しておきたい場合

そうは言っても、「含み損になっている銘柄でも配当利回りが良いので保有を続けたい」という場合もあるかと思います。あるいは市場全体が落ち込んで株価が低迷している時など、「売却せずに保有を続けていればいずれ株価が回復するはず」という場合もありますよね。

なので先ほどの例の場合、売却して40万円の損失を確定させた銘柄については、また買い戻すことになります。

損失を確定させるだけだといわゆる「損切り」で、長期で株を保有したい私のような個人投資家には向きません。売却後にまた買い戻すからこそ、「損出し」という節税方法となるのです。

こうすることで損益通算による節税メリットは享受しつつ、含み損となっていた銘柄をより低い平均取得単価で保有することになり、気持ちの良い再スタートを切ることができます。

この、「気持ちの良い再スタート」の重要性は人によって異なりますが、個人投資家にとっては無視できない要素だと思います。

たとえば先ほどの例だと、40万円の含み損を抱えていた銘柄が含み損ゼロの状態に戻るわけです。

私の場合、これがけっこう重要だと思っていて、保有銘柄一覧を見たときに含み損の銘柄が多いと、やっぱりあまり楽しい気持ちにはなれないんですよね。なので見かけ上だけでも含み損の銘柄が減るのは、心理的にかなり差が出ます。

単純に気持ちの問題ではあるのですが、それでも経験上、気持ちに余裕がある方が投資判断も失敗しにくいので、これも損出しのメリットではあると思っています。

損出しは本質的には税金の先送り

その年だけで見れば節税となる損出しですが、あくまでも税金の先送りでしかないことには注意が必要です。

先ほどの例の場合、40万円の含み損だった銘柄で損出しを行い8万円の節税効果を受けた後、その銘柄が元々の取得価格まで戻ったとします。この状況で、損出し時に買い戻していたその銘柄を売却したとすると、元々の取得価格と同じ価格に戻っただけであるにもかかわらず、取引上は40万円の利益が出たことになり、8万円の税金がかかることになります。つまりは、8万円の課税を先送りしただけ、ということができます。

とはいえこれは、その銘柄を売却した場合の話。もしその銘柄が一定水準以上の配当金を出し続けるのであれば「そもそも売却しない」という選択肢も現実味を帯びてきます。

なのでたとえ先送りだったとしても手元に現金を残し、その現金を再投資に回して収益を高めていく方が、合理的な判断だと言えます。

ただし、これは税制が現状のままで変わらず、将来的に税率が上がらないと仮定した場合の話です。株式の配当や売却益にかかる税金については税率の引き上げが検討されているとの報道もあるため、個人投資家といえども税制には気を配っておく必要がありそうです。

損出しは同一証券口座で同一営業日内に買い戻すのはNG

個人的にはメリットが大きく、配当金目的の投資との親和性も高いと感じている損出しですが、実際に損出しをする場合には注意点がいくつかあります。

まず、損出しのために株を売却した後、同一の証券口座で同日中にその株を買い戻してしまうと、実際には「売ってから買った」にもかかわらず、税金の処理上は「買ってから売った」ことになってしまいます。ややこしいので数字で説明します。

元々100万円(10,000円×100株)で購入した銘柄が60万円(6,000円×100株)まで値下がりしたため、損出しのためにいったん売却し、すぐに同じ値段で買い戻したとします。このとき、普通に考えれば40万円分の損失が出たことになりそうなものですが、会計処理上は「買ってから売った」ことになるため、「元々、10,000円×100株で購入していた銘柄を、6,000円×100株で追加購入した。つまり平均取得単価8,000円×200株を保有している。そこから100株を株価6,000円で売却したため、(8,000円-6,000円)×100株=20万円の損失が確定し、そして手元には取得価格8,000円の100株(含み損20万円)が残る」といった処理になります。

これはもう、「そういうルールになっている」ということだけ知識として知っておけば良いと思います。

年末の損出しは最終受渡日に注意

次に、損出しを行うタイミング、というか日付についても注意が必要です。
先に結論を書いておくと、「損出しは年内最終営業日の2営業日前までに済ませておく」ことが必要になります。

というのも、税の計算のルール上、株の取引日とは「受渡日」のことを指します。そして受渡日とは売買の決裁を行う日とされていますが、これは約定日の2営業日後となっています。

たとえば2019年の取引所の最終営業日は12月30日(月曜日)なので、2019年内に出た利益と損益通算するための取引は、12月26日(木曜日)までに約定している必要があります。

うっかりこの日を過ぎて12月30日に損出しを行ったとしても、その損失を計上できるのは翌年の2020年となってしまいます。そんな事態を避けるためには、その年の利益額がある程度予想できた時点で早めに損出しを済ませておく、というのが一番確実で手っ取り早いですね。

長期保有で株主優待が増える銘柄なども注意が必要

株主優待を実施している企業の中には、保有期間に応じて優待内容の上乗せなどを実施している企業もあります。継続保有期間が1年以上の株主には金券を500円分追加、3年以上でさらに1000円分追加、といった具合ですね。

企業が株主優待を実施する目的が個人投資家の安定株主を増やすことだとすれば、継続保有期間に応じて優待内容を上乗せする、という企業は今後もさらに増えていくことが予想されます。

で、この「継続保有期間」については一般的に、「同一の株主番号で連続して株主名簿に記載されていること」となっている企業が多いのですが、損出しのためにその銘柄の全株式を売却してしまうと、株主番号が変わってしまう可能性があります。

「可能性がある」というのは、株主番号を確定させる(株主名簿の情報を更新する)のは一般的に権利確定日であるため、いったん全株式を売却しても次の権利確定日までに買い戻せば株主番号が変わらない場合が多いとされているからです。とはいえ全ての証券会社.、全ての上場企業が同じ仕組みで動いているという確証は無いので、最終的には自己責任での判断が必要となります。

つまり損出しに使う銘柄としては、株主優待を実施していない企業や、継続保有期間が短くても株主優待の内容に影響が無い銘柄の方が優先順位が高いということになります。

損出しの具体的な方法、やり方は主に3パターン

損出しの方法としては「売却して含み損を確定させてから、買い戻す」というのが基本となります。そのため、具体的には主に以下の三つのパターンが考えられます。

  • 1.いったん売却して、翌日以降に買い戻す。
    最もシンプルな方法ですが、売った価格と同じ価格で買い戻せるかどうかが不透明な点が気になります。一晩で株価が大きく動くことはよくあることですが、売却してから買い戻すまでの間に株価が上昇していればそのぶんだけ損失を被ることになりますし、逆に売却した価格よりも低い価格で買い戻すことができればそのぶん利益を得ることもできます。
  • 2.現物売りと信用買いを同時に行い、信用買いのポジションを翌日に現引きする。
    信用口座を開設している必要がありますが、ほぼ確実に売りと買いを同じ価格で行うことができます。また、翌日に現引きすればコストもほとんどかかりません。
  • 3.別々の証券口座で売りと買いを同時に行う。
    複数の証券会社で口座開設をしている必要がありますが、こちらもほぼ確実に売りと買いを同じ価格で行うことができます。信用口座を開設したくない、もしくはできない場合に使える方法です。


ちなみに私は「3.別々の証券会社で売りと買いを同時に行う」を実施しています。複数の証券会社を使い分けることは面倒な一面もあるのですが、たとえばサーバーダウン時などを想定すると複数証券会社に口座を分散しておくのはリスク管理の観点からも合理的だと考えています。

どの方法にもメリット・デメリットがありますので、唯一の正解はありません。そのため自分にとって一番良い方法を、その都度選択していくことになります。

なお、1つ注意しておかなければいけないのが、損出しを行う金額があまりにも大きいと仮装売買、相場操縦であるとして詐欺罪にあたる場合があるらしいです。とはいえ普通の庶民に動かせるような金額であればほとんど関係は無いと思いますが、それでも取引高が極端に少ない銘柄での損出しは避けておいた方が無難と言えそうです。

損出しは配当金目的の高配当株投資と相性が良い

ここまでで見てきたとおり、損出しは確定利益と含み損を相殺させるという節税方法です。そのため、確定利益は配当金でも売却益でも、どちらにも対応できます。

ただ、売却益については「もう年内は売買しない」と決めてしまわない限りは最後まで金額を確定させることができないため、「どのくらいの金額を損出しすれば良いか」を決めるのが難しくなります。

一方で、配当金については10月には「年内にいくら配当金が入ってくるか」はおおよそ計算できることになります。というのも、配当金が振り込まれるのは権利確定日の2~3カ月後となるため、年内に入金されるのは9月末の中間決算の中間配当まで、というパターンが多いからです。

また、配当金目的で多数の銘柄に分散投資をしていれば、いくつかの銘柄が含み損となっていることも珍しくはありませんが、計画的に損出しを行っていけばそんな含み損もしっかりと有効活用していくことができます。

もちろん「含み損の銘柄がまったく無い」という状況が理想なのは間違いありませんが、そんなに上手くいかないのも現実ですよね。そのため、長期保有前提の配当金投資は損出しとの相性が良いと言えます。

さらに言えば、株式取引での損失は最大で3年間繰り越すことができます。来年以降の配当金の額は株価の増減よりも予想しやすいため、たとえば今年中に大きめの金額の損出しを行い、3年かけて配当金と相殺していくことも可能です。

損出しのためには複数の証券口座を開設すると楽

株価の変動リスクを最小限に抑えつつ損出しを行うためには、信用取引を行うか、あるいは複数の証券会社で口座を開設しておく必要があります。

私自身は複数口座を開設して損出しを行っていますが、結局のところこれが一番簡単で確実、かつ取引コストも低く抑えられると考えています。

投資や資産運用についてあまり興味が無い、という人であれば複数の証券会社で口座を持つことを面倒だと感じるかもしれませんが、私のようにあれこれと考えてほんの少しでも利回りを上げていくことに楽しさを感じる人であれば、長期的には複数口座開設のメリットを感じる機会は必ずあると思います。

損出しは年内に済ませる必要がありますが、口座開設には多少の時間がかかります。なので複数口座開設を検討される場合は、年末が近づいてから慌てることのないよう、早めに行動に取りかかることをおすすめします。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

プロフィール

自由になりたくて高配当株を買い増ししている、30代既婚子持ちの共働きサラリーマンです。
投資や節約、子育て、副業、共働き、といった内容で記事を書いていますが、基本的には「誰かの役に立つかもしれない日記」です。
無理をせず、でも投げ出さず。小さな行動をコツコツと積み上げていきます。

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